ティモシー・フェリスという人物をご存じでしょうか。
世界的なベストセラー『The 4-Hour Workweek』の著者で、短時間で成果を出すことに徹底した自己実験家です。
彼の著書『The 4-Hour Body』では、「最小限の食事と努力で脂肪を落とす方法」が紹介されています。
今回の内容は、その一部を私なりの解釈として要点だけ抜き出したものです。
私はフィジーク選手として何度も減量を経験してきました。
その過程で「食事管理は複雑ではなく、むしろ単純化した方が続きやすい」という考えに強く共感しました。
特に、毎日違う食事を考えること自体がストレスになる人には刺さると思います。
この動画(note)では、ティモシー・フェリスが提案する食事戦略を要約し、フィジーク減量や研究ベースで活用する視点から整理します。
すべてを真似する必要はありません。大切なのは「最小の労力で結果につなげる仕組みを作ること」です。
ここから、私が実際に取り入れた内容と、競技者としての視点から感じたメリット・注意点を解説していきます。
ティモシー・フェリスの食事ルール1:白い炭水化物を食べない

最初のルールは、とてもシンプルです。
白い炭水化物は基本的に食べないというものです。
ここでいう「白い炭水化物」とは、精製された穀物を指します。
血糖値とインスリンが急上昇しやすく、脂肪として蓄積されやすいとされています。
食べないものの例
- 白米、もち
- パン、菓子パン
- パスタ、うどん、ラーメン
- 小麦粉を使った揚げ物
- ケーキやクッキーなどの甘い焼き菓子
芋類も基本的には対象に含まれます。
ジャガイモやさつまいもなどは、血糖値が上がりやすい食品として扱われています。
このルールのねらい
著者の考え方を一言でまとめると、「血糖値の乱高下を抑えれば、余計な脂肪はつきにくい」というものです。
- 血糖値が急に上がる
- インスリンが大量に分泌される
- 余ったエネルギーが脂肪として蓄えられる
この流れを断ち切るために、精製された炭水化物を一度きっぱり抜いてしまう、という発想です。
フィジーク目線で感じるポイント
フィジークの減量では、白米やジャガイモをうまく使うやり方もあります。
なので、このルールをそのまま大会前の食事に当てはめると、人によっては筋量維持が難しくなる可能性もあります。
ただ、「食材の選択肢をあえて減らすことで、意思決定のストレスを減らす」という考え方は、かなり実践的です。
減量がつらくなる理由のひとつは、何をどれだけ食べるかを毎日考え続けることです。
最初から「これは食べない」と決めてしまうことで、迷うエネルギーをトレーニングや仕事に回せるメリットがあります。
ティモシー・フェリスの食事ルール2:同じ食事を繰り返す

2つ目のルールは、とてもシンプルです。
食事内容を固定して、毎日同じメニューを繰り返すというものです。
ダイエットが続かない大きな原因の一つは、
毎食「何を食べるか」を考えることにエネルギーを消費してしまうことです。
最初から食べるものを決めてしまえば、判断のストレスがなくなり、
食事管理が圧倒的に楽になります。
フェリスの典型的な食事例(要約)
- 卵(3個程度)+豆類+ほうれん草
- 鶏むね肉などのタンパク質+豆類+ブロッコリー
- 赤身牛肉などのタンパク質+豆類+野菜
このように、基本は「タンパク質+豆類+野菜」の組み合わせです。
味付けは自由ですが、食材自体はほとんど変えません。
このルールのねらい
- 迷う要素を減らして「意思決定疲れ」を防ぐ
- 摂取カロリーを自然と安定させる
- 栄養構成を一定に保ち、体調変化を把握しやすくする
フェリスは「食事を変化させるほど痩せにくくなる」と述べています。
あえてパターン化することで、継続率を高める戦略です。
フィジーク目線での考察
大会に向けた減量では、食材を少しずつ調整したり、炭水化物の種類やタイミングを意図的に変えることがあります。
しかし、ダイエットがうまくいかない人の多くは「正しい食材選びよりも、まず継続できていない」状態です。
そのため、最初の数週間だけ食材を固定して継続率を上げる方法は、非常に現実的です。
私自身も減量初期は食事パターンを完全に固定することで、トレーニングに対する集中力が高まりました。
ティモシー・フェリスの食事ルール3:飲み物でカロリーを摂らない

3つ目のルールは、カロリーのある飲み物を避けるというものです。
食事管理がうまくいかない人の多くは、食べ物以外からもカロリーを摂ってしまっています。
砂糖入りのコーヒーやジュース、ミルク入りドリンク、スムージーなども対象とされます。
基本的には「水、無糖のお茶、ブラックコーヒー」を推奨しています。
摂らない飲み物の例
- 砂糖入りコーヒーや紅茶
- ジュース類
- 牛乳(低脂肪乳も含む)
- スムージー、フルーツドリンク
- スポーツドリンク、栄養ドリンク
フェリスは「飲み物に含まれる糖質や乳成分は脂肪管理を難しくするため避けるべき」と主張しています。
例外とされているもの
- 水(常温または冷水)
- 無糖のお茶(緑茶やハーブティーなど)
- ブラックコーヒー
- 赤ワイン(少量であれば可とされています)
ただし、赤ワインについても大会前の減量期では取り入れにくいため、
フィジーク競技に合わせる場合は基本的にアルコールも制限する選択が現実的です。
このルールのねらい
- 液体カロリーは吸収されやすく、満腹感が得にくい
- 血糖値が急激に上がりやすい
- 食事管理の努力に気づかない形で影響してしまう
「飲み物はゼロカロリー」を徹底するだけで、
体重管理が安定しやすくなるという考えが基盤になっています。
フィジーク目線での考察
減量中はプロテインドリンクを活用することがありますが、フェリス式ではそれも「固形食で摂取することを推奨」しています。
私の場合、朝は固形の食材でたんぱく質を摂るようにし、プロテインドリンクはトレーニング後など必要なタイミングに限定しています。
飲み物からのカロリーを減らすだけでも脂肪の落ち方が変わるため、体重が停滞している場合は、真っ先に見直す価値があるポイントです。
ティモシー・フェリスの食事ルール4:果物を食べない

4つ目のルールは、果物を基本的に食べないというものです。
理由は、果物に含まれる果糖が脂肪として蓄積されやすいと考えられているためです。
特に、果糖は血糖値を急激に上げにくい一方で、肝臓で代謝されやすく、中性脂肪として蓄積される可能性があります。
避けるとされる主な果物
- りんご、バナナ
- ぶどう、オレンジ、グレープフルーツ
- マンゴー、パイナップル
- ドライフルーツ全般
「自然な食品だから安心」と思って果物を食べてしまうことがありますが、フェリス式では短期的に脂肪を落とす段階では完全に除外する方針が取られています。
例外として許可されているケース
フェリスは、基本的に果物は禁止としていますが、チートデイのみ摂取しても良いとしています。
それ以外の日は食べないという割り切った考え方です。
このルールのねらい
- 果糖による脂肪蓄積を防ぐ
- 糖質の摂取源を豆類や野菜に限定して血糖値の安定を保つ
- 甘味を求める習慣を断ち切る
フェリスは「果物は健康的に見えるが、減量目的の場合はむしろ逆効果になりやすい」と述べています。
フィジーク目線での考察
競技者の減量では、果物を完全に排除するケースは少なくありません。
特に仕上がりを重視する時期では、糖質源として果糖を避ける戦略は現実的です。
ただし、一般的なダイエットの場合は、不足しやすいビタミンや食物繊維を果物から摂取するケースも多く、
このルールを厳密に適用するかどうかは目的によって判断が分かれるところです。
私自身は、減量中は果物を制限しつつ、
必要に応じて朝やトレーニング前に少量だけ摂取するなど調整しています。
完全除去は短期間の脂肪減少には有効ですが、体調や集中力とのバランスを見て判断することが重要です。
ティモシー・フェリスの食事ルール5:週1回のチートデイを設ける

最後のルールは、週に1度だけ好きなだけ食べても良い日を作るというものです。
意外に思われるかもしれませんが、このチートデイは食事戦略の重要な要素とされています。
継続的に糖質を制限していると代謝が落ちやすくなります。
そこで、一時的にカロリーと糖質を大量に摂取することで、Leptin(レプチン)や甲状腺ホルモンなどの代謝関連ホルモンを刺激し、停滞を防ぐ狙いがあります。
チートデイに食べてもいいとされている例
- ごはん、パスタ、パンなどの炭水化物
- 甘いお菓子やデザート
- ハンバーガーやラーメンなどの高カロリー食
- 果物やジュースなど糖質が多いもの
フェリスは「むしろ積極的に食べる」ことを推奨しており、制限から一時的に解放されることで精神的なリフレッシュにもつながると述べています。
チートデイの注意点
- 開始直後に高GI食品を一気に食べすぎない
- 食べる前に簡単な運動(スクワットなど)で血糖値上昇を和らげる
- 翌日は水分摂取を増やし、塩分や糖分を排出しやすい状態にする
本書では、チートデイの前に筋トレを行う方法が紹介されています。
フィジーク視点での考察
一般的なダイエットでは停滞時の打開策として有効な場合がありますが、
大会前の減量期では脂肪蓄積やむくみにつながる可能性があるため注意が必要です。
私自身の経験としては、減量初期やオフシーズンであればチートデイを取り入れることでメンタルが安定し、
結果的に長期的なコンディション管理が行いやすくなるケースもありました。
大会直前のストイックなフェーズではなく、初期段階や停滞期に限定して活用することが現実的です。
Slow-Carb Diet 5つのルールまとめ

ここまでティモシー・フェリスが提案する食事戦略を、5つの基本ルールに分けて紹介しました。
- 白い炭水化物を食べない
- 同じ食事を繰り返す
- 飲み物でカロリーを摂らない
- 果物を食べない
- 週に1回チートデイを設ける
どのルールも目的は共通しています。
「食事の選択を極限までシンプルにして、血糖値と代謝を安定させる」という考え方です。
食材を絞り込むことで意思決定のストレスが減り、
食事管理を続けやすくなるという点は、私自身も強く共感しています。
競技者向けの減量にそのまま当てはめるのは難しい部分もありますが、
減量初期や停滞時の食事戦略として応用しやすい内容です。
大切なのは、全てを完璧に真似するのではなく、自分の目的に合わせて取り入れることです。
特に大会前の段階では、チートデイよりもリフィードを選ぶなど、状況に応じた判断が重要になります。
次の章では、この食事法をフィジークやボディメイク向けに応用する方法として、
実際に私が取り入れた食材例や改善アレンジを紹介します。
食事を「我慢するもの」ではなく、「戦略的に操作するもの」として捉えるきっかけになれば幸いです。
フィジーク向け Slow-Carb Diet の応用方法

ここでは、私自身がフィジーク減量期に応用した方法と、食材アレンジの例を紹介します。
1. 主食の完全排除は行わず「低GI炭水化物を戦略的に使用」
Slow-Carb Diet では白米や芋類を完全に排除しますが、フィジーク減量では筋量維持のために炭水化物を一定量確保することが必要です。
- 白米は一時的にカットせず、朝またはトレーニング前後に限定して摂取
- トレーニング日:体重 × 3~4 g を目安に設定
- 休息日:必要に応じて減量(または Slow-Carb 的な制限へ切替)
私の場合、減量初期は朝50g/トレーニング前30gを基準とし、段階的に調整しました。
2. 豆類は胃腸状態を見て使用(PFCと消化負担を考慮)
フェリスの食事では豆類が大量に使われますが、日本人の胃腸では消化しづらい場合があります。
- レンズ豆・黒豆 → フィジーク減量では1食につき 30~50 g まで
- 代替案 → 納豆、枝豆、ひよこ豆(少量)
- 胃腸負担がある場合 → 思い切って排除しても良い
私自身は、朝食だけ豆類を採用し、それ以降は脂質の少ない主食に切り替える方法が適していました。
3. チートデイではなく「リフィード」に置き換える
Slow-Carb Diet では週1回のチートデイが推奨されていますが、
フィジーク減量期では脂質の摂りすぎによるコンディション悪化を避ける必要があります。
- チート → 高脂肪・高糖質を自由に摂取
- リフィード → 高炭水化物・低脂質・適切なたんぱく質量で調整
私の場合、体重が停滞したタイミングで炭水化物のみを 1.5~2倍に増やす方法が最も効果的でした。
4. 動きはそのまま真似せず「最小労力×最大効果の発想だけ活用」
フェリスの戦略は「努力を削って成果を最大化する」点にあります。
競技者の場合は、食材や摂取量ではなく食事ルーティンの固定化に注目するのがポイントです。
- 食事パターンを2~3種類に固定(例:朝・昼・夜)
- 同じ食材を使うことで測定誤差が出ない
- 考える時間を減らすことで練習や仕事に集中
具体例として、私の減量期メニュー(初期)は以下の通りです。
【朝】鶏むね肉 150g + 白米 50g + ほうれん草
【昼】鱈 150g + レンズ豆 40g + ブロッコリー
【トレ前】バナナ 1本(※Slow-Carb ではNGだが競技目的で採用)
【夜】牛モモ肉 120g + 白米 30g + キャベツ
まとめ
競技者が本書を活用する場合は、食材やルールを厳密に守る必要はありません。
「食事の意思決定を減らし、継続しやすい形に整える」
この発想だけ取り入れることで、減量ストレスが軽減され、結果にもつながりやすくなります。
今回紹介した食事法は、あくまで最小限の努力で結果を出すためのヒントです。
全てを真似する必要はなく、自分の目的に合わせて調整していくことが大切です。
次回は、実際に僕が大会に向けて食事をどう変えていったのか、停滞した時に何を見直したかなども含めてお話しする予定です。

