「朝のコーヒーにMCTオイルを入れて、完全無欠ダイエット!」
ダイエッターやトレーニーの間で、もはや常識となりつつあるMCTオイル習慣。
「脂肪燃焼スピードが上がる」「脳が覚醒する」といったメリットばかりが強調されていますが、実際に飲んでみてこう感じたことはありませんか?
- 飲んだ直後、胃がキリキリと痛む
- トイレから出られないほどの激しい下痢に襲われた
- なんとなく胃もたれや、胸焼けが続く
もし心当たりがあるなら、あなたの体は「その油は危険だ!早く出せ!」と悲鳴を上げているのかもしれません。
MCTオイルは確かにエネルギー効率の良い油ですが、見方を変えれば「自然界には存在しない濃度で精製された工業製品」でもあります。
今回は、MCTオイルが体に及ぼす「副作用」と、特に沈黙の臓器である「肝臓」への知られざる負担について、辛口で解説します。
誤解しないでください。MCTオイルにも「明確なメリット」はあります

ここまで厳しいことを言いましたが、私はMCTオイルの効果を全否定しているわけではありません。
用法・用量を守り、体質にさえ合えば、他の食品にはない「特殊能力」を発揮するのも事実です。
世界中のダイエッターが熱狂したのには、それなりの科学的理由があります。
1. 「空腹感」を強制的にシャットダウンできる
「16時間断食(オートファジー)」をしている方にとって、最大の敵は「空腹」です。
MCTオイルは、この悩みを解決する強力なサポーターになります。
MCTオイルから作られる「ケトン体」には、脳の満腹中枢に働きかけ、食欲を抑える効果があります。
朝食の代わりにMCTオイル入りのコーヒーを飲むことで、「血糖値を上げずに(インスリンを出さずに)脳にエネルギーを送る」ことができ、空腹の辛さを感じずに断食時間を延長できるのです。
2. 脳の霧が晴れる(ブレインフォグの解消)
「飲んだら頭が冴えた」という口コミが多いのも、プラシーボではありません。
通常、脳はブドウ糖しかエネルギーにできませんが、ブドウ糖が枯渇した緊急時(断食中など)には、MCT由来の「ケトン体」をスーパー燃料として使います。
ケトン体はブドウ糖よりも燃焼効率が良いため、一時的に集中力が増し、頭がクリアになる感覚(覚醒感)を得られるのです。
⚖️ ただし「等価交換」であることを忘れないで
これらのメリットは、「肝臓を急激に働かせてエネルギーを作り出した結果」得られるものです。
「空腹が消える」「頭が冴える」というリターンの裏には、必ず「肝臓への負担」というコストが存在します。
このメリットとデメリットを天秤にかけ、自分の体調と相談しながら使うのが賢い付き合い方です。
なぜMCTオイルでお腹が壊れるのか?腸を襲う「浸透圧」の衝撃

MCTオイル初心者の多くが経験する「激しい腹痛と下痢」。
これは単なる好転反応などではなく、医学的に説明がつく「浸透圧性下痢」という現象です。
腸が「異物」として水で洗い流そうとする
MCT(中鎖脂肪酸)は、一般的な油(長鎖脂肪酸)とは違い、水に馴染みやすい性質を持っています。
高濃度のMCTオイルが一気に小腸に入ってくると、腸内の浸透圧が急激に高まります。
すると体は、「濃度が高すぎる!薄めなきゃ!」と判断し、腸壁から大量の水分を腸内に引き込みます。
さらに、刺激の強い異物を早く外に出そうとして、腸のぜん動運動を過剰に活発化させます。
その結果が、あの冷や汗が出るほどの腹痛と、水のような下痢です。
つまり、下痢をするということは、体がMCTオイルを「吸収しきれない毒」として拒絶しているサインとも言えるのです。
「消化が良い」の落とし穴。肝臓にとっては「強制労働」である

MCTオイルの最大の売りは、「消化吸収が早く、すぐにエネルギー(ケトン体)になる」ことです。
しかし、これは裏を返せば「肝臓への負担が凄まじい」ことを意味します。
MCTは「肝臓直行便」の劇薬
通常の油(肉や魚の脂)は、リンパ管を通ってゆっくりと全身に運ばれます。
しかし、MCTオイルは門脈を通って「肝臓」へダイレクトに送り込まれます。
| 一般的な油(長鎖脂肪酸) | MCTオイル(中鎖脂肪酸) |
|---|---|
| ゆっくり運ばれ、必要に応じて使われる。 (焚き火の薪) | 強制的に肝臓に運ばれ、即座に燃やされる。 (ジェット燃料) |
前回の記事(BCAA)でも触れましたが、トレーニーの肝臓はただでさえタンパク質の代謝で疲れています。
そこにMCTオイルという「ジェット燃料」を流し込むとどうなるか。
肝臓は休む暇なくケトン体を作らされ、オーバーヒートを起こします。
「MCTオイルを飲み始めてから、なんとなくダルい、疲れが抜けない」
もしそう感じるなら、それはエネルギー不足ではなく、「肝疲労」の可能性が高いのです。
4毒抜きの視点:MCTオイルは「不自然な工業製品」である

吉野先生が提唱する「4毒抜き」では、植物油(オメガ6など)の摂取を控えることが推奨されています。
MCTオイルは「飽和脂肪酸だから安全」と謳われていますが、製造工程を見れば、それが自然な食品とはかけ離れていることが分かります。
「油」ではなく「薬剤」に近い
MCTオイルは、ココナッツやパームフルーツから「中鎖脂肪酸」という成分だけを化学的に抽出・精製して作られます。
本来、ココナッツの中に含まれる食物繊維やミネラル、その他の脂肪酸をすべて削ぎ落とし、特定の成分だけを濃縮したものです。
私たちの体は、自然なバランスの食材を消化するようにできています。
自然界に存在しない濃度まで精製されたオイルを流し込むことは、食事というより「薬剤投与」に近い行為です。
肝臓や腸がパニックを起こすのも無理はありません。
日本人のエネルギー源は「油」ではなく「糖」だ

MCTオイルブームの背景には、「ケトジェニック(糖質制限)」の流行があります。
「糖質を悪者にして、脂質をエネルギーにしよう」という考え方ですが、これは農耕民族である日本人の遺伝子にはフィットしません。
エンジンを変える無理ゲー
私たち日本人は、数千年にわたって「お米(ブドウ糖)」を主食として生きてきました。
つまり、体は「ハイブリッド車(ガソリン=糖)」として設計されています。
そこに突然、MCTオイルを入れて「今日から電気自動車(電気=ケトン体)になれ!」と命令しても、システムエラーが起きるだけです。
- 欧米人(狩猟民族):脂質の代謝が得意。ケトン体回路への切り替えがスムーズ。
- 日本人(農耕民族):糖質の代謝が得意。脂質過多は胃腸と肝臓を壊す原因になる。
「MCTオイルを飲んでも痩せない」「むしろ体調が悪くなった」という人は、遺伝子に合わない燃料を無理やり燃やそうとしている可能性が高いのです。
【結論】
脳のエネルギー不足を感じるなら、肝臓を痛めつけるオイルを飲むのではなく、「小さなおにぎり」を食べてください。
それが、日本人の体にとって最もクリーンで、負担の少ないエネルギー補給です。
MCTオイルについてのよくある質問

Q1. 便秘解消のために飲んでいますが、ダメですか?
A. それは解消ではなく「下痢」です。やめましょう。
MCTオイルを飲んで便が出るのは、腸内環境が整ったからではありません。
前述の通り、体が「異物を追い出そう」として水分を引き込み、無理やり排出している(下剤と同じ作用)だけです。
本当の便秘解消を目指すなら、オイルではなく「水溶性食物繊維(海藻・オクラ)」や「マグネシウム」を摂るべきです。
Q2. ココナッツオイルなら良いですか?
A. 精製されていないものならOKです。
MCTオイル(抽出物)ではなく、香りの残っている「バージンココナッツオイル」であれば、自然な食品に近いので、適量なら問題ありません。
ただし、4毒抜きの観点からは、やはり油自体を積極的に摂る必要性は低いと考えます。
Q3. 既に買ってしまって大量に残っています…
A. 加熱せず、ドレッシングとして少量ずつ使い切りましょう。
もったいないからといって大量に飲むと体を壊します。
サラダやスープに小さじ1杯程度かけるなど、あくまで「調味料」として少しずつ消費してください。
※MCTオイルは発煙点が低いため、炒め物などの加熱調理には絶対に使わないでください。煙が出て非常に危険です。
おわりに:魔法のオイルなんて存在しない
- 「飲むだけで痩せる」
- 「脳が冴え渡る」
そんな甘い言葉に乗せられて、私たちはつい新しいスーパーフードに飛びついてしまいます。
しかし、日本人の健康を支えてきたのは、カタカナのオイルではなく、いつだって「お米」と「味噌汁」でした。
もし今、MCTオイルでお腹を下したり、胃もたれを感じているなら、それは体が「普通の食事に戻してくれ」と訴えているサインです。
そのボトルを置いて、温かいおにぎりをよく噛んで食べてみてください。
きっとその方が、体も脳も喜ぶはずです。
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