ジムに行くと、蛍光色のドリンク(ワークアウトドリンク)を飲みながらトレーニングしている人をよく見かけます。
「BCAA」や「EAA」と呼ばれるこれらのアミノ酸サプリメントは、今やトレーニーの必需品のように扱われています。
しかし、ここで一度冷静になって考えてみてください。
あなたは毎月5,000円〜10,000円近いお金をそのパウダーに払い、本当にその価格に見合った効果(筋肥大)を実感していますか?
「周りが飲んでいるから」「YouTubeで有名な選手が勧めていたから」
もしそんな理由で飲み続けているなら、あなたは「高価な人工甘味料入りのジュース」に無駄金を払っている可能性があります。
近年、多くの研究で「BCAA単体の筋合成効果」には疑問符がつけられており、さらに過剰な添加物が腸内環境を破壊するリスクも指摘されています。
今回は、サプリメントメーカーが教えたがらない「アミノ酸サプリの不都合な真実」と、本当に投資すべき「タンパク源」について、科学的エビデンスに基づいて解説します。
科学的根拠1:BCAA単体では「筋肉の材料」が足りない

かつて「トレーニング中のドリンクといえばBCAA」が一世を風靡しました。
BCAAとは、必須アミノ酸のうち、筋肉の合成スイッチを入れる役割を持つ3つ(バリン・ロイシン・イソロイシン)のことです。
しかし、近年のスポーツ栄養学では「BCAA単体摂取の効果は限定的である」という見解が主流になりつつあります。
「桶(おけ)の理論」で分かるアミノ酸の落とし穴

筋肉を作るには、9種類の必須アミノ酸(EAA)がすべて揃っている必要があります。
これを「桶の理論」で説明しましょう。
- 筋肉合成:水(桶に溜まる水)
- アミノ酸:桶を作る9枚の木の板
BCAAを飲むということは、「9枚のうち3枚の板だけを長くする」ようなものです。
他の6枚の板(残りの必須アミノ酸)が短ければ、そこから水(筋肉合成のチャンス)は漏れ出してしまいます。
実際、2017年の研究(Wolfeら)では、「BCAA単体の摂取は、すべての必須アミノ酸(EAA)を摂取した場合に比べて、筋タンパク質の合成反応が著しく低い」という結果も示されています。
👷♂️ 家づくりに例えると…
- BCAA(ロイシン等):「家を建てろ!」と叫ぶ現場監督
- EAA(残り):木材やコンクリートなどの材料
BCAAだけを飲むのは、「現場に監督ばかり大量にいて、肝心の材料がない状態」です。
これでは家(筋肉)は建ちません。材料不足のまま命令だけされても、体は困ってしまい、最悪の場合、他の筋肉を分解して材料を調達しようとします。
科学的根拠2:EAA vs プロテイン(WPI)、軍配はどっち?
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「じゃあ、9種類すべて入っているEAAなら最強でしょ?」と思うかもしれません。
確かにEAAは材料が揃っていますが、プロテイン(特にWPI)と比較した時、「コスト」と「添加物」という大きな壁が立ちはだかります。
吸収スピードの差は「価格差」に見合うか?
| 比較項目 | EAA (アミノ酸) | WPI (プロテイン) |
|---|---|---|
| 成分 | 必須アミノ酸9種類 | 必須アミノ酸9種類 +非必須アミノ酸 |
| 吸収速度 | 超高速 (15〜30分) | 高速 (45〜60分) |
| 価格(1kg) | 高い (6,000円〜1万円) | 安い (3,000円〜5,000円) |
| 添加物 | 多い (苦味を消すため大量の甘味料) | 少ない (プレーンならゼロ) |
EAAの最大のメリットは「吸収の速さ」です。飲んですぐに血中アミノ酸濃度が上がります。
しかし、トレーニングの1時間前に食事やWPIプロテインを摂取しておけば、トレーニング中も血中のアミノ酸濃度は十分に高い状態をキープできます。
つまり、「食事管理ができている人にとって、高価で添加物だらけのEAAは必須ではない」というのが、科学的かつ経済的な結論です。
結論:あなたはEAAを買うべきか?判断基準はこれだ

結局のところ、あなたのアミノ酸サプリは「投資」なのか「浪費」なのか。
以下のチェックリストで、自分の立ち位置を確認してください。
❌ 買わなくていい人(9割がここ)
- トレーニング時間が1時間以内
- 食事が1日3食以上しっかり摂れている
- トレーニングの1〜2時間前に食事をしている
- お腹が弱い、ガスが溜まりやすい
- コスパ重視で体を大きくしたい
➡ 結論:WPIプロテインとおにぎりで十分。
食事とWPIで血中アミノ酸濃度は維持できます。浮いた5,000円で良質な鶏肉や卵を買うほうが、体作りには効果的です。
⭕ 買う価値がある人(上級者)
- トレーニングが2時間を超える(スタミナ切れ対策)
- 減量末期で、摂取カロリーを極限まで削っている
- 仕事の都合で、どうしても空腹状態でジムに行く
- お金に余裕があり、1%でも効率を上げたい
➡ 結論:EAAを「保険」として活用。
「筋肉の分解」という最悪の事態を防ぐシートベルトとして機能します。ただし、選び方に注意が必要です。
🧪 【実験室の深掘り】なぜ昔のビルダーはBCAAを飲んでいたのか?

「EAAの方が優秀なら、なぜ昔からボディビルダーはBCAAを飲んでいたの?」
という疑問を持つ方もいるでしょう。実はこれには、BCAAの「生まれ(出自)」が関係しています。
BCAAは元々「肝臓の薬」だった
BCAA(分岐鎖アミノ酸)は、医療現場では「肝硬変の患者さん」の栄養療法として使われてきた歴史があります。(リーバクト等の製剤)
通常、タンパク質は肝臓で代謝されますが、BCAAだけは「肝臓をスルーして筋肉で直接代謝される」という特殊能力を持っています。
つまり、肝機能が低下している人でも栄養を摂取できる唯一のアミノ酸なのです。
「肝臓お疲れ族」には救世主だった
昔のボディビルダーたちは、大量の肉(タンパク質)やサプリメントを摂取するため、肝臓が常にフル稼働で疲弊していました。
そこで、「疲れた肝臓を休ませつつ、筋肉にエネルギーを送りたい」という切実な理由でBCAAが重宝されたのです。
⚠️ ここに「現代の落とし穴」がある
「じゃあ肝臓をいたわるために飲もう!」と思った方、ちょっと待ってください。
医療用の純粋なBCAAと違い、市販の美味しいBCAAジュースには「大量の人工甘味料と着色料」が入っています。
これでは、BCAAで肝臓を休めるどころか、添加物の解毒で逆に肝臓を痛めつけてしまいます。
一般のトレーニーが「雰囲気」だけでBCAAを飲むメリットは、現代ではほぼないと言えるでしょう。
【例外】減量末期だけは「EAA」が最強の防具になる

ここまで「基本的には不要」と解説してきましたが、ルールが180度変わる瞬間があります。
それが、フィジークやボディビルの大会に向けた「減量末期(コンテスト2ヶ月前〜)」です。
体が「非常事態」の時はスピードが命
減量末期、体内のエネルギー(糖質・グリコーゲン)は枯渇しています。
この状態でハードなトレーニングを行うと、体は猛烈な勢いで筋肉を分解してエネルギーを作ろうとします(糖新生の加速)。
この時ばかりは、消化に1時間かかるプロテインや、固形物の食事では間に合いません。
「飲んで15分で血中に届く」という点滴のようなスピードを持つEAAだけが、筋肉の分解を物理的に食い止めることができるのです。
🏆 実験室の結論:減量期限定の「戦略的摂取」
「健康(腸内環境)」と「勝負(筋肉の維持)」、この2つを両立させるための、当サイトの推奨ルールは以下の通りです。
- 通常期(増量・維持):
EAAは不要。WPIと食事で肝臓を休ませる。 - 減量末期(枯渇時):
EAA必須。ただし、腸へのダメージを最小限にするため「ノンフレーバー」を選び、大会までの期間限定で摂取する。
これが、体を守りながらステージで勝つための、最も賢いサプリメント運用術です。
どうしても飲むなら「ノンフレーバー」という苦行を選べ

「私は上級者を目指すからEAAを飲む!」と決めたあなたへ。
ここで最大の壁となるのが、「人工甘味料」の問題です。
市販の美味しいフルーツ味のEAAには、アミノ酸特有の「強烈な苦味とエグみ」を消すために、スクラロースやアセスルファムKが大量に投入されています。
これでは筋肉を守れても、腸内環境はボロボロになります。
本気で体を思うなら、選ぶべきは「ノンフレーバー(プレーン)」一択です。
⚠️ 警告:味は覚悟してください
ノンフレーバーのEAAは、正直に言って「不味い」です。苦い薬のような味がします。
しかし、この不味さこそが「余計な添加物が入っていない証拠」です。
ビルダー飲み(粉を口に放り込んで水で流し込む)をするか、100%グレープフルーツジュースなどで割って一気に飲むのが正解です。
実験室が推奨する「腸に優しい」アミノ酸
添加物を極限まで排除した、硬派なアミノ酸サプリを紹介します。
▼ コスパ最強・混ぜ物なしの純粋EAA
GronG(グロング) EAA 必須アミノ酸 ノンフレーバー
人工甘味料・香料・着色料ゼロ。味は二の次で、中身の質と腸への優しさを最優先するトレーニーのための製品です
BCAA・EAAについてのよくある質問

最後に、アミノ酸サプリについてよくある誤解と質問に回答します。
Q1. BCAAを飲むと疲れにくい気がするのですが?
A. それは「脳が騙されている」だけかもしれません。
BCAAには、脳内で眠気や疲労感を感じさせる物質(セロトニン)の材料となる「トリプトファン」の働きをブロックする作用があります。
つまり、「肉体的な疲労」が消えたのではなく、「脳が疲れを感じにくくなった(麻痺した)」という状態に近いです。
集中力を保つ意味では有効ですが、筋肉そのものの回復とは別物だと理解しておきましょう。
Q2. トレーニングをしない日(オフの日)も飲むべきですか?
A. 全く必要ありません。金の無駄です。
トレーニングをしていない時は、血流も穏やかで、急速なアミノ酸補給を必要としていません。
オフの日は、卵や魚などの「固形物」からゆっくりと栄養を摂るのが、内臓にとってもベストな休養になります。
Q3. ジュース代わりに飲んでいますが、ダメですか?
A. 砂糖入りのジュースよりはマシですが、腸には悪いです。
「カロリーゼロだから」といって、水代わりにガブガブ飲むのは危険です。
人工甘味料の過剰摂取は、腸内細菌(善玉菌)を減らし、ガス溜まりや便秘の原因になります。
喉が渇いたら、一番良いのは「水」か「麦茶」、またはカフェインレスの「ハーブティー」です。
おわりに:その5,000円、もっと良い食材に使えませんか?

「最新のサプリを飲めば、魔法のように筋肉がつく」
私たちはついそう期待してしまいますが、残念ながらボディメイクに近道はありません。
BCAAやEAAという「断片的なパーツ」にお金をかける前に、まずは家の土台となる「食事(PFCバランス)」と「プロテイン(WPI)」を見直してみてください。
毎月サプリに消えていた5,000円があれば、スーパーで一番高い卵を買ったり、抗生物質不使用の鶏肉を選んだりできます。その「質の高い食事」こそが、1年後、あなたの体を劇的に変える本当の投資になるはずです。
💪 コスパ重視なら「WPI」一択!
「EAAは高いけど、筋肉分解は防ぎたい…」という方は、WPIプロテインを活用しましょう。
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⏰ EAAを飲むとオートファジーが止まる?
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