カロリー制限は意味ない?『世界最新の太らないカラダ』の衝撃事実をフィジーク選手が解説

カロリー計算に疲れていませんか?

「痩せるためには、摂取カロリーを消費カロリーより減らさなければならない」

これはダイエットの鉄則として、私たちトレーニーやダイエッターの頭にこびりついています。私も大会に向けた減量期には、PFCバランスを計算し、少しのカロリーオーバーにも神経質になることがあります。

しかし、もし「毎日5000kcal以上食べても、ほとんど太らず、逆にウエストが細くなった男」がいると言ったら、信じられますか?

「そんなのありえない」「物理の法則に反している」

そう思うのが普通です。しかし、全米ベストセラー『世界最新の太らないカラダ(The Obesity Code)』には、私たちの常識を覆すデータが記されています。

今回は、この本で紹介されている衝撃的な実験を紹介しつつ、以下の3つのポイントについて深掘りしていきます。

  • 衝撃の実験結果:なぜ5000kcal食べても太らなかったのか?
  • フィジーク選手の視点:この理論は「筋肥大」や「減量」に本当に使えるのか?
  • 日本人への適合性:欧米の研究データは、私たち日本人にも当てはまるのか?

カロリー計算だけに囚われていると見逃してしまう、体のメカニズム(ホルモン)について、現役選手の立場から徹底考察します。

目次

伝説の実験:サム・フェルサムの「5000kcalチャレンジ」

この本の中で最も強烈なインパクトを残しているのが、サム・フェルサムという人物が行った実験です。

彼は「カロリーの量」ではなく「カロリーの質(何を食べるか)」が体型にどう影響するかを、自らの体を使って証明しました。

彼は21日間ずつ、標準的な成人男性の摂取量の2倍にあたる約5,800kcalを毎日摂取するという過酷なチャレンジを行いました。

その結果は、これまでのカロリー神話を崩壊させるものでした。

実験A:低炭水化物・高脂質(LCHF)ダイエット

まずは、炭水化物を極限まで減らし、脂質をたっぷり摂る食事です。

  • 摂取カロリー:5,794kcal /日
  • 食事内容:ナッツ、魚、ステーキ、卵など(炭水化物は全体の10%以下
  • カロリー説の予測:大幅なカロリー過多で、数kgは確実に太るはず。

【衝撃の結果】

  • 体重:+1.3kg(予想よりはるかに少ない)
  • ウエスト:-3.0cm(なんと細くなった!)

驚くべきことに、体重の増加は微々たるもので、ウエストに関しては逆に細くなるという現象が起きました。

実験B:標準的なアメリカ人の食事(高炭水化物・加工食品)

次に、同じカロリー量で、現代人が好む「炭水化物」中心の食事を行いました。

  • 摂取カロリー:5,793kcal /日
  • 食事内容:シリアル、パン、パスタ、砂糖入り食品など
  • カロリー説の予測:実験Aと同じカロリーなので、同じだけ太るはず。

【衝撃の結果】

  • 体重:+7.1kg(激増)
  • ウエスト:+9.25cm(ズボンが入らなくなるレベル)

なぜ同じカロリーで結果が違うのか?

実験Aと実験Bの摂取カロリーはほぼ同じです。しかし、結果は天と地ほどの差が出ました。

著者のジェイソン・ファン博士は、この結果についてこう結論づけています。

「太る原因はカロリーの過剰摂取ではなく、ホルモンの異常(インスリン抵抗性)である」

仕組みはシンプルです。

  • 炭水化物を摂ると血糖値が上がり、肥満ホルモンである「インスリン」が大量に分泌され、エネルギーを脂肪として蓄え込みます。
  • 脂質・タンパク質はインスリンをあまり刺激しません。そのため、カロリーが高くても体は代謝を上げて熱として放出したり、排出したりするのです。

フィジーク選手の視点:この理論は「ボディメイク」に使えるか?

さて、ここからはトレーニーとしての考察です。「カロリーよりホルモン(インスリン)が重要」という理論は、筋肉をつけ、脂肪を削ぎ落としたい私たちにとって、どう解釈すべきでしょうか。

現役フィジーク選手としての実感と照らし合わせると、「減量」と「増量」で評価が分かれます。

① 「減量(カッティング)」には? → 【極めて有効】

実験A(低糖質・高脂質)の結果は、私たちコンテスト出場者が減量末期に行う「ケトジェニックダイエット」そのものです。

減量が進まなくなった時(停滞期)、あえて脂質の摂取量を増やし、炭水化物を徹底してカットすることがあります。これは、インスリンレベルを底まで下げることで、体が糖ではなく脂肪をエネルギーとして使うモード(ケトーシス)へ強制的に切り替えるためです。

「5000kcal摂ってもウエストが減った」という事実は、減量において以下の戦略が正しいことを裏付けています。

  • カロリーを減らして代謝を落とすのではなく、脂質を恐れずに摂取して代謝を維持する。
  • その代わり、糖質は徹底して抑え、インスリンを出させない。

このアプローチなら、筋肉量を維持したまま、頑固な脂肪だけを削ぎ落とせる可能性が高いです。

② 「筋肥大(バルクアップ)」には? → 【条件付きで注意が必要】

では、バルクアップ中も実験Aのような食事が最強か?というと、そこは議論の余地があります。

なぜなら、本書で悪者扱いされているインスリンは、実は「地上最強のアナボリック(同化)ホルモン」でもあるからです。

インスリンには、血液中のアミノ酸やグルコースを筋肉に強力に送り届ける役割があります。完全にインスリンを排除し続けると、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

  • 筋肉の張り(グリコーゲン)がなくなり、サイズがしぼんで見える。
  • トレーニング中のパンプ感が失われる。
  • 高強度トレーニングのエネルギー源が不足する。

実験B(ジャンクフード過多)のような「ダーティバルク」が最悪なのは明白です。

しかし、筋肉を最大限大きくするには、トレーニング前後などタイミングを見計らって「良質な炭水化物(クリーンな糖質)」を摂取し、意図的にインスリンを味方につける戦略も必要でしょう。

つまり、ボディメイクにおいては「インスリンを敵視するのではなく、コントロールする」という視点が重要になります。

日本人への適合性:欧米の研究を鵜呑みにしていいのか?

ここまで「ケトジェニック(高脂質食)最強説」のような話をしてきましたが、最後に一つ、私たち日本人にとって無視できない問題を提起します。

著者は「ネズミを使った動物実験は人間には当てにならない」と切り捨てていますが、私はこう思いました。

「じゃあ、欧米人を対象にした研究結果は、私たち日本人にそのまま当てはまるのか?」と。

日本人は「インスリン」が弱い

遺伝的に、欧米人はインスリンを分泌する能力(膵臓の機能)が非常に高いと言われています。だからこそ、彼らはあれほど太れる(脂肪細胞に詰め込める)のです。

一方、私たち日本人はインスリン分泌能力が弱い傾向にあります。 そのため、欧米人ほど太る前に糖尿病になったり、内臓脂肪がついたりしやすいのです。

また、脂質を大量に代謝するのが苦手で、高脂質食で胃もたれや体調不良を起こす人も少なくありません。

結論:日本人こそ「糖質」に気をつけるべき

「欧米の研究だから日本人には合わない(だから米をたくさん食べてもいい)」ということにはなりません。むしろ逆です。

インスリンを出す力が弱い日本人こそ、大量の炭水化物による血糖値スパイクのダメージを直接受けてしまいます。

そう考えると、本書が提唱する以下のメソッドは、膵臓が弱い日本人にとってこそ重要です。

  • 「何を食べるか」:精製された炭水化物(砂糖・小麦)を減らす。
  • 「いつ食べるか」:ダラダラ食べず、インスリンを出さない時間(空腹時間)を作る。

減量期に「ケトジェニック」を取り入れるのは非常に有効ですが、もし脂質で体調が悪くなる場合は、無理に油を飲まず、単純に「糖質をカットする」ことに集中するだけでも効果はあるはずです。

まとめ

今回の記事のポイントをまとめます。

  1. カロリーは単なる数字。 5000kcal摂っても、インスリンを出さなければ体脂肪は増えにくい。
  2. 太るスイッチは「インスリン」。 減量期は、このスイッチを押さない食事(低糖質)がカギ。
  3. フィジーク視点での活用。 減量には「ケトジェニック」が理にかなっているが、筋肥大にはインスリンのコントロールが必要。

もちろん、私たちトレーニーにとって「筋肉を維持しながら脂肪だけ落とす」のが至上命題です。

極端な5000kcal生活を真似する必要はありませんが、「カロリー計算よりもホルモン管理」という視点を持つだけで、停滞していた減量が動き出すかもしれません。

みなさんも、次の減量期には「カロリー」の裏にある「ホルモン」を意識してみませんか?

よくある質問(FAQ)

Q. 本当に毎日5000kcalも食べて大丈夫ですか?

A. いいえ、無理に食べる必要はありません。
この実験の目的は「5000kcal食べろ」と推奨することではなく、「カロリーの数字よりもホルモン(インスリン)の影響が大きい」と証明することです。
フィジーク選手やアスリートでない限り、お腹がいっぱいになったら食べるのをやめる「満腹感に従う食事」で十分です。

Q. 日本人が脂質を増やすと胃もたれしませんか?

A. その可能性はあります。

記事内でも触れましたが、日本人は欧米人に比べて脂質の消化吸収が苦手な人が多いです。

いきなりステーキやバターを大量に摂るのではなく、消化しやすいMCTオイルや、良質な魚の油(オメガ3)から少しずつ慣らしていくことをおすすめします。

Q. お米は絶対に食べてはいけないのでしょうか?

A. タイミングを選べばOKです。

私たちトレーニーの場合、トレーニング直後はインスリンの感受性が高まっており、食べた糖質が脂肪ではなく筋肉に運ばれやすい状態です。

「基本は低糖質、トレーニング後だけお米を食べる」というサイクル(カーボサイクリング)なら、インスリンを味方につけることができます。

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この記事を書いた人

30歳からフィジーク選手としてトレーニングに励んでいます。世の中に正しいボディメイク情報を発信するために活動しています💪

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