『世界最新の太らないカラダ』はトレーニーにも有効か?筋肉を残して脂肪だけ落とす「ハイブリッド食事術」

こんにちは。メンズフィジークの地方オープン大会で9位に入賞した経験を持つ、フィットネスブロガーのともやです。

突然ですが、あなたは『トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ』という書籍をご存知でしょうか?

「カロリー制限は意味がない」
「肥満の真犯人はインスリン」
「食べる回数を減らせ(断食しろ)」

これまでのダイエット常識を覆す内容で世界的ベストセラーとなったこの本。読めば納得の理論ばかりですが、日々デカくなるためにトレーニングに励む私たちにとっては、少し「モヤッとする部分」がありませんか?

🤔 トレーニーが抱く素朴な疑問

  • 「え、空腹時間が長いと筋肉が分解される(カタボリック)んじゃないの?」
  • 「デカくなるためには、1日6食こまめにタンパク質を摂るのが常識だよね?」

そう、この本で推奨されている「断食(ファスティング)」と、ボディメイク界隈で常識とされる「分食(頻回食)」は、一見すると真逆の理論なのです。

「健康のためには断食がいいらしいけど、筋肉は落としたくない…どっちを信じればいいんだ!」

そんなふうに迷っている方も多いのではないでしょうか。

結論から言います。
この本は「減量」における最強のバイブルですが、「筋肉を増やす(増量)」ためには、少し違ったアプローチが必要です。

実は、ボディビル的な食事法も、この本の理論も、根底にあるメカニズムはたった一つ。
「インスリン」をどう操るか、これに尽きます。

この記事では、実際に体を鍛え抜き、大会で絞り切った私の経験をもとに、医学的なエビデンスと現場のトレーニング理論を融合させた「トレーニーのためのハイブリッド食事術」を解説します。

  • 一般のダイエッターとトレーニーの決定的な違い
  • 筋肉を残しながら脂肪を削ぎ落とす「インスリン」の操り方
  • フィジーカーが実践する「断食」の正しい使いどころ

もしあなたが、「ただ痩せるだけでなく、カッコいい体を作りたい」と思っているなら、ぜひ最後までお付き合いください。

「食べる」ことへの意識が、今日からガラリと変わるはずです。

目次

まずは本書の「核心」をおさらい:真犯人はカロリーではなく「インスリン」

まず、本書『世界最新の太らないカラダ』の主張を、トレーニー向けに超約して解説します。

従来のダイエットでは「摂取カロリー < 消費カロリー = 痩せる」という図式が常識でした。
しかし、著者のジェイソン・ファン医師は、膨大な研究データをもとにこれを真っ向から否定します。

肥満の真の原因は、カロリーの摂りすぎではなく、ホルモン(インスリン)の異常である。

インスリンは、血糖値を下げるだけでなく、以下の2つの強力な働きを持っています。

  1. 脂肪を蓄える(エネルギーの貯蔵)
  2. 脂肪の燃焼をストップさせる(分解のロック)

つまり、インスリンが出続けている状態(頻繁な食事や糖質過多)では、体の脂肪燃焼スイッチはずっと「OFF」のまま。
この状態でいくらカロリーを減らしても、体は「代謝」を落として省エネモードになるだけで、脂肪は燃えてくれないのです。

これは、私たちトレーニーにとっても納得できる話ではないでしょうか?
減量期には、白米ではなく「GI値(グリセミック指数)」が低いサツマイモやオートミールを選びますよね。これは無意識のうちに「インスリンの急上昇を抑え、脂肪合成を防ぐ」という医学的に正しい行動をとっているのです。

ここが違う!「一般のダイエット」と「ボディメイク」の決定的な差

では、なぜ「断食(食べない)」と「1日6食」という矛盾した正解が存在するのでしょうか。
それは、「インスリンをどうしたいか」という目的が真逆だからです。

1. 一般の方の正解は「インスリンを出さない」こと

運動習慣がなく、ただ体脂肪を落としたい一般の方の場合、インスリンは基本的に「敵」になりがちです。
現代の食生活では、朝・昼・晩におやつまで食べて、常にインスリンが出っぱなしの状態(インスリン抵抗性)になっている人がほとんどです。

だからこそ、本書の通り「断食(ファスティング)」をして、インスリンを徹底的に休ませる時間を確保するのが、健康的に痩せるための最短ルートになります。

2. トレーニーの正解は「インスリンを『狙って』出す」こと

ここが今回の肝です。
実はインスリンは、世界最強の「アナボリック(同化)ホルモン」でもあります。

筋肉を大きくするためには、ハードなトレーニングで傷ついた筋肉の中に、アミノ酸や糖を素早く送り込む必要があります。
その「運搬役(トラック)」こそがインスリンです。

ボディビルダーが1日6食こまめに食べるのは、あえて常にインスリンを出し続け、筋肉の合成スイッチを24時間オンにし続けるためなのです。

⚠️ ここだけは勘違いしないで!

ただし、これには絶対的な条件があります。
それは、「ハードなトレーニングをしていること」です。
ハードに動くからこそ、食べた栄養が「脂肪」ではなく「筋肉」に使われます。トレーニング強度が低い人がこれを真似すれば、ただ太るだけ(脂肪合成)で終わります。

フィジーク9位が教える!本書の理論を応用した「筋肉を残す減量法」

では、私たちトレーニーはこの本をどう活用すればいいのでしょうか?

私が大会に向けた減量や、日々の調整で実践しているのは、「タイミングによって使い分ける」というハイブリッドな手法です。

① 炭水化物は「タイミング」が9割

本書では糖質制限が推奨されていますが、トレーニーは「トレーニング直後」だけは解禁(むしろ推奨)します。

筋トレ直後は、筋肉の「インスリン感受性」が極限まで高まっています。
このタイミングで糖質(おにぎりや和菓子など)を摂っても、インスリンは余ったエネルギーを脂肪に変える暇がなく、枯渇した筋肉のエネルギー(グリコーゲン)としてスポンジのように吸収してしまいます。

「普段の食事ではインスリンを抑え(本書の教え)、トレ後だけは最大限に利用する(ボディビル理論)」
このメリハリこそが、筋肉を残して脂肪だけを削ぎ落とす最大のコツです。

② 断食は「インスリン感受性」を取り戻すために使う

増量期に「1日6食」を続けていると、だんだんインスリンの効きが悪くなってくる感覚があります。
(たくさん食べているのに筋肉が張らない、お腹周りばかり脂肪がつく、食後に猛烈に眠くなる、など…)

これは体が「インスリン疲れ(軽度の抵抗性)」を起こしているサインです。

そこで私は、増量期でも週に1回程度、あるいは減量の入り口で「16時間断食」を取り入れます。
一時的に栄養を断つことで、鈍感になった体のセンサー(受容体)をリセットするのです。

そうすると、再び食事を戻した時に、栄養が面白いほど筋肉に行き渡るようになります。
フィジーカーにとっての断食は、「カロリーを減らすため」ではなく、「食べたものを筋肉に効かせるため」のメンテナンスなのです。

注意!「良質な脂質」の解釈を間違えるな

最後に一つ、トレーニーが陥りやすい罠について。

本書では「脂質はインスリンを出さないから、カロリーを気にせず食べてOK」とされています。
アボカド、ナッツ、オリーブオイル…確かに健康には最高です。

しかし、トレーニーが増量期(ハイカーボ)にこれを鵜呑みにすると危険です。

❌ 最悪の組み合わせ
「大量の糖質(ご飯・パスタ)」+「大量の脂質」

インスリンがドバドバ出ている状態(糖質摂取中)で脂質を大量に摂ると、インスリンの働きにより、その脂質はすべて体脂肪として強力に蓄積されます。

  • 炭水化物をしっかり摂るなら、脂質は抑える(ローファット)。
  • 炭水化物を抜く(断食やケト)なら、脂質をしっかり摂る。

このPFCバランスの管理こそが、ボディメイクの基本であり奥義です。
「本に脂質は太らないって書いてあったから」といって、ご飯大盛りの牛丼を食べていては、残念ながら脂肪ダルマになってしまいます。

まとめ:自分の目的に合った「食事の型」を選ぼう

今回は『世界最新の太らないカラダ』を、フィジーク選手の視点から解説しました。

  • 一般のダイエット:
    カロリー計算より「インスリン」を抑えることを優先。16時間断食は超有効。
  • ボディメイク:
    「インスリン」を筋肉合成のためにあえて利用する。ただし、感受性を維持するために断食を戦略的に使う。

「1日6食」も「16時間断食」も、どちらも正しいメソッドです。
重要なのは、「今の自分の目的は、筋肉を増やすことなのか?脂肪を落とすことなのか?」を明確にし、カードを切ることです。

この本は、人体のホルモンの仕組みを理解する上で非常に役立ちます。
ぜひこの知識を武器にして、あなたにとっての「理想のカラダ」を作り上げてください!

【Q&A】トレーニーからよくある質問

Q1. 16時間断食をすると、筋肉が分解(カタボリック)されませんか?

A. 短期間(16〜24時間)であれば、それほど心配する必要はありません。
むしろ断食中は「成長ホルモン」の分泌量が増えるため、筋肉の保護作用が働きます。ただし、断食明けの食事でしっかりとタンパク質を確保すること、ハードなトレーニングを継続することが条件です。

Q2. 断食中にBCAAやEAAを飲んでもいいですか?

A. 厳密な「オートファジー(細胞の浄化)」を目的とするなら、アミノ酸もインスリンをわずかに刺激するためNG(水・お茶・コーヒーのみ)です。
ただし、「筋肉の維持」を最優先するなら、トレーニング中のBCAA/EAA摂取は有効です。私は減量末期などは筋肉保護を優先して飲むようにしています。

Q3. トレーニングはどのタイミングで行うのがベストですか?

A. 「断食時間の終わり際(食事の直前)」がおすすめです。
空腹状態で脂肪燃焼効果を高めたままトレーニングを行い、終了直後に食事を摂ることで、枯渇した筋肉にスムーズに栄養を届けることができます。

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この記事を書いた人

30歳からフィジーク選手としてトレーニングに励んでいます。世の中に正しいボディメイク情報を発信するために活動しています💪

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